2024/04/19 00:22
お店を始めたころに密かに抱いていた大きなテーマがあります。
「北海道で育った木で、長く使えるベーシックな製品を作りたい」
なんとなく、頭の片隅に閉まっていたふんわりした想いですが、とあるきっかけから本格的に挑戦してみようと思います。
オリジナル製品を作る意味、製品ができるまでの記録をどうぞお読みください。
●2023年の夏に出張で訪れた旭川
行った先のトークイベントで耳にした「北海道の材料を中心に考えたモノづくり」という家具づくりの考え方
その内容はとても興味深く、そして感銘を受けました。
地元の人には地元木材として認知されていても、積極的に活用されない地方木材というものが存在がします。
そのひとつが北海道の「カバの木」、白樺の仲間です。
木質は硬く粘りもあってなめらかな肌触り、木目はとても綺麗です。
しかし、赤太・白太の差が激しいことで表面に縞模様が出ることがあるので量産製品には不向きで、その結果あまり知名度がありません。
その一方、森の循環を考えるうえで積極的な活用を求められる場合もあります。
「北海道の森の未来を考る」
森の未来を考える大きいビジョンの中で、街の小さな家具屋が活用できる森の量はほんの微々たるものかもしれません。
それでも「inoya.」としてできることを考えて、カバの木で家具を作りたいと思います。
●北海道で育った木を使い、長く使える製品を作ろう
日々の暮らしの中に溶け込む道具として、日常に寄り添ってくれる「スツール」を作ることにしました。
共に製品づくりを手伝ってくれたのは、北海道のほぼ中心に位置する上川郡東川町の木工所です。
こちらの木工所は、「ここの木の家具・北海道プロジェクト」という取り組みに参加しています。
現在は、外国産材を使用した家具が一般的ですが、改めて「北海道の木」の素晴らしさ、そして「北海道の森」の持続可能性に向き合い、2014年に旭川家具の仲間たちと始めた取り組みが「ここの木の家具・北海道プロジェクト」です。
木と長年向き合ってきた経験に基づいた「自主基準」を設け、積極的な活用と品質維持に取り組んでいます。
何度か試作を重ねて完成したスツールがこちらです。
「北海道の材料を中心に考えたモノづくり」という考え方を念頭に置き、材料は北海道産のカバ材を使用しています。
今回選定したカバ材は、木目の豊かさから個体ごとに木目が大きく異なる特徴を持ちます。
この個体ごとの個性を尊重したいと考え、一点ずつ「個別販売」をすることにしました。
これまでたくさんの木製家具を見てきましたが、必ずしも綺麗な見た目だけが価値があるとは思いません。
好きな木目やお好みの色味を選んで手にすることができれば、より一層の愛着が生まれる、そう信じています。
そして、
「継続的して作り続けていき、いつまでも使われ続けていく家具になってほしい」
その願いを込めて、一点ずつ「個別販売」をしてみようと思います。
1脚ごとに選んでいただけるようにレーザーで製品番号を印字しています。
こちらの黄色いタグは、北海道産材を使った家具のしるしとして取り付けられます。
「使い込むほどに味わいが増し、手が触れた数だけ経年変化を楽しむことができる家具」
これは、inoya.が考えている家具との向き合い方、考え方の一つです。
ぜひ、個性豊かな「木目」から選ぶ楽しさを皆さんにも味わっていただき、どうか自然の表情と向き合い、そのモノの価値を皆さん自身で膨らませていただければ嬉しく思います。
BOGEN スツール 「花台にもなる腰掛けスツール」
◆サイズ感
キッチンでちょっと腰かけたいときに座ったり、鉢植えをおいて植物を飾ったりと日常的に使いやすいコンパクトなサイズ感にしました。